優しい王様

ある所に大きな国が二つありました。二つの国の皇女は、違った性格をしていました。一人はとても優しく、一人はとても残酷でした。王子は成人すると、立派な王様になりました。

ところが、その地方に飢饉が押し寄せました。王様は飢饉で人が死んでもなんとも思いませんでした。それどころか、国にあった米の蓄えを高く売りつけました。その国はますます大きくなりました。

一方優しい王様は、飢饉が起きると黙って人をほって置けませんでした。忠実な部下に命じて国民に食料を配りました。お金は取りませんでした。

しかしなんということか国王は病に臥してしまいました。頼れるのは妻や子供でした。ところが国民にお金を使ってしまったので妻は国王を見捨てて出て行ってしまいました。国王は、病床の中でも人の事を考えていました。忠実な部下を毎日国全体に見回りにいかせました。するとまだ貧しい人の所に食料がいきわたっていませんでした。

王様は忠実な部下に命じました。

「残った財産を売って施しなさい。私がやったと言ってはならない。」忠実な部下は言われたとおりにしました。

王様は貧しい人が助かった事を聞き、安心しました。そこで忠実な部下に言いました。

「私はもう直ぐ死ぬ。よいか宮殿を売り払ってお前の物にするがよい。私の葬式は、誰にも言っては成らない。お前が人を手配して私を静かな山の頂きに葬っておくれ。」

忠実な部下は言われた通りにしました。実はもうお金が無くてお葬式が挙げられなかったのです。

一方の王様は、やることが全て成功して大金持ちになりました。しかし 人を人と思わない考え方は死ぬまで変わりませんでした。

時が過ぎ忠実な部下の所に貧しかった家の娘がやってきました。

娘は言いました。

「ある時神様にお祈りしていると、あくる朝玄関に金貨が在ったのです。私はそのお陰でこうして働けるまでになりました。

何がおきたのか教えて下さい。」

忠実な部下は言いました。

「前にお亡くなりになった王様が貴方の事を心配して財産をなげうって救ったのだ。」

この話は、国民の心を打ちました。皆は王様が既に死んでいることを悔やみました。

しかし皆は言いました。

「王様の愛のある行いは私達の心に行き続けているではないか。」

いっぽうのお金持ちの王様は、盛大な葬式を上げられましたが、人の心から直ぐに消え去りました。

人の行った愛のある行いや言葉は人の心に永遠に生き続けるのです。

今井英人の物語集

人生で辛い時にフッと心に浮かんだ物語です。

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