鳴けない鈴虫

ある岩の割れ目に鈴虫の親子が居ました。お父さんは、歌声がとてもうまい鈴虫でした。子供は、大人になる前に脱皮をします。この家の子供も脱皮をはじめました。

ところが、なんということか最後の羽を伸ばすときに物に触れてしまったのです。かわいそうに、その子は、鳴けませんでした。両親は可哀想に思いましたが、どうする事も出来ませんでした。

隣の割れ目からは、他の家の子供達がリンリンと鳴きます。鳴けない鈴虫は、外に出る事も無く、涙を流して泣いていました。お父さんは、それ以来自慢の歌声を披露する事はありませんでした。

ある日の事、他の鈴虫が自慢げに鳴いていると、空から大きな手が飛んできて皆をさらって行きました。それは、人間でした。鈴虫を捕まえたのです。

親子は、鳴かなかった為に助かりました。その後その親子は岩の割れ目の中で仲良く幸せに長生きしました。

今井英人の物語集

人生で辛い時にフッと心に浮かんだ物語です。

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